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「悪魔の命令」心神喪失で1審無罪の5人殺傷、2審も無罪
大阪府茨木市で平成16年11月、車で男女5人を次々とはねて2人を殺害したとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた産経新聞販売店の元配達員の男(27)の控訴審判決公判が24日、大阪高裁で開かれた。古川博裁判長は、男が犯行当時、心神喪失状態で責任能力がなかったとして無罪(求刑・無期懲役)とした1審・大阪地裁判決を支持、検察側の控訴を棄却した。
公判は1、2審を通じ、男の刑事責任能力の有無が最大の争点となった。
男は捜査段階と1審公判段階にそれぞれ精神鑑定を受け、両鑑定とも統合失調症に罹患(りかん)し、幻聴による「悪魔の声」に命令された犯行とした。
しかし、幻聴が犯行に及ぼした影響の程度をめぐる認定に違いがあり、捜査段階の鑑定は限定的な責任能力を認める心神耗弱、公判段階の鑑定は責任能力がない心神喪失とし、昨年2月の1審判決は公判段階の鑑定を採用して無罪を言い渡していた。
控訴審で検察側は、男が「お母さんと妹を殺す」という幻聴の命令を拒否しており、幻聴に完全に支配された状態ではなかったと主張した。しかし古川裁判長は、家族への殺害命令について「1回だけなされたもので、拒絶しようと耐えている間に『5人殺せ』という次の命令に変わった。決して執拗(しつよう)なものではなかった」と指摘。男が犯行後、幻聴に従って車内で全裸になり、自殺を試みたことなどから「幻聴の圧倒的な影響下にあった」と認定、検察側の主張を退けた。
男は16年11月18日朝、茨木市で車を暴走させ、自転車に乗っていたいずれも会社員の村田忠治郎さん=当時(61)=と米林和夫さん=同(56)=を相次いではねて殺害、自転車の男女3人に重傷を負わせたとして起訴された。
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男は1審判決後から措置入院中といい、この日は黒色のジャージー姿で入廷。証言台のいすに座り、判決が読み上げられる間、時折首をゆっくり上下に揺らすなど落ち着きのない様子で聞き入った。閉廷後に突然、古川裁判長に「一言、言わせてもらいたい」と意見陳述を求め、弁護人から制止される一幕もあった。