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【検察の論告(2)】殺害、遺体損壊ともに合理的に行動 (3/3ページ)
〈鑑定の結果は全く信用できない〉
・鑑定結果の概要
鑑定の結果は「勇貴被告は生来的にアスベルガー障害に罹患(りかん)し、これに強迫性障害が加わり、犯行時には解離性同一性障害が発生、殺人の犯行時には心神耗弱の状態であり、死体損壊の犯行時には心神喪失の状態であった」というものでした。
・精神鑑定結果と責任能力の判断との関係
最高裁判所平成20年4月21日判決は「生物学的要素である精神障害の有無や程度、ならびにこれが心理学的要素に与えた影響の有無や程度については、精神医学者の意見が鑑定などとして証拠となっている場合には、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、その意見を十分に尊重して認定すべき」と判示しました。
しかし、逆に、鑑定の前提条件に問題があるなどの鑑定結果が採用できない合理的な事情が認められる場合には、鑑定結果に従う必要はないのであり、最高裁判所昭和58年9月13日決定も「勇貴被告の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であってもっぱら裁判所に委ねられるべき問題であることはもちろん、その前提となる生物学的、心理学的要素についても、法律判断との関係で究極的には裁判所の評価に委ねられるべき問題である」と判示しているのです。
これから理由を述べるように、鑑定には多くの問題があり、鑑定結果は採用すべきではありません。
・鑑定の経緯
そもそも本件鑑定は、勇貴被告の精神状態に関する情状鑑定であり、鑑定人も認めているように、責任能力の有無・程度を正面から判断することを目的としたものではありませんでしだ。そのため、鑑定の手法は通常の精神鑑定とは一部異なっていますので、鑑定によって勇貴被告の責任能力の有無・程度を適切に判断することはできないのです。
・鑑定方法も適切ではない
先ほど詳しく述べたように、勇貴被告の捜査段階の供述内容は、到底捜査官が創作や誘導ができるものではなく、極めて信用できるものですが、このような信用性の高い捜査段階の供述を判断資料から除外し、それとかけ離れた内容で、検証もできないような独自の問診結果を資料とした鑑定は、鑑定の前提条件を明らかに誤っています。このことが責任能力の判断にも重大な影響を及ぼすことは明らかです。
・判断過程なども適切ではない
鑑定の判断過程には重大な問題と疑問があります。
たとえば、鑑定した牛島教授自身も、解離性同一性障害の判断は確定診断ではなく、推測・仮説にすぎないことを認めています。学問の世界ならそれでよいのかもしれませんが、刑事裁判でこのような推測・仮説を信用して責任能力の判断の資料とすることは、あまりに無謀です。
このように、勇貴被告が解離性同一性障害に罹患しているという判断自体が根拠に乏しく、説得力に欠けます。
・小括
鑑定では、勇貴被告が解離性同一性障害に罹患していたと診断され、これに基づいて勇貴被告の責任能力の有無や程度が判断されています。
しかし、この診断結果は、誤った前提条件に基づいたもので、診断結果自体も根拠に乏しいものです。このような診断結果に基づく勇貴被告の責任能力の判断結果が信用できないことは明らかです。
=(3)に続く
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