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【検察の論告(1)】被告の公判供述は場当たり的だ (1/3ページ)
●事実関係
〈事件の概要と争点〉
・事件の概要
事件は、勇貴被告が平成18年12月30日、自宅で実の妹である亜澄さんの首をタオルで絞めた上、浴槽内に亜澄さんの頭部を水没させ、窒息死させて殺害し、さらに、その遣体を包丁やのこぎりでバラバラに切断したという殺人、死体損壊の事件です。
・争点と検察官の主張
この事件の事実関係は、勇貴被告も認めている上、そのほかの証拠からも証明は十分になされています。
これに対し、勇貴被告は公判段階で、「亜澄さんを殺害し、その遺体を切断した動機は分からない」と供述し、弁護人は「勇貴被告が亜澄さんを殺害したのは、勇貴被告が人格障害から亜澄さんの言動に異常に反応したためであり、その遺体を切断したのは動機が見いだせない」と主張しております。裁判では勇貴被告の責任能力の有無と程度が争点となっています。
そして、この事件では、勇貴被告の精神状態や心理状態について、牛島定信教授による鑑定が公判段階で行われました。牛島鑑定人は「勇貴被告は生来的にアスペルガー障害に罹患(りかん)しており、これに強迫性障害が加わった。犯行時には解離性同一性障害が発生した。殺人の犯行時には心神耗弱の状態であり、死体損壊の犯行時には心神喪失の状態であった」と結論づけました。
しかし、この鑑定結果は、全く信用できません。なぜなら、この鑑定が認めた勇貴被告の精神状態は、この事件の犯行の動機や犯行の手段、態様などから認められる勇貴被告の精神状態や、捜査段階における勇貴被告の供述と明らかに矛盾しているからです。また、鑑定人の問診時における信用性の全くない勇貴被告の供述に基づいたものだからです。
責任能力の判定については、最高裁判所昭和59年7月3日決定が、「鑑定書全体の記載内容とそのほかの精神鑑定の結果、記録により認められる被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機、態様などを総合して」責任能力の有無を判断すべきと判示しています。
のちに述べるように、信用性が極めて高い捜査段階における勇貴被告の供述によると、勇貴被告には亜澄さんを殺害し、その遣体を切断する十分な動機があり、その動機も通常人が十分了解できるものでした。そして、犯行時や犯行前後の勇貴被告の行動は、合理的で目的に沿ったものでした。加えて、勇貴被告は、犯行後に証拠隠滅工作まで行いました。また、勇貴被告には精神科の受診歴はなく、日常生活においても特異な言動などはありませんでした。
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