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【法廷から】親族に異変…酒に逃げた被告
金、愛憎、酒−。刑事裁判を傍聴していて事件の原因として語られることが多いのが、この3つだ。公務執行妨害の罪に問われた男性調理師の被告(57)の初公判が1日、東京地裁で開かれた。この被告も、酒が原因で被告として、法廷に立つことになった。
起訴状によると、被告は昨年10月21日、東京都品川区の飲食店前の路上で、無銭飲食の通報で現場に駆けつけた警察官に飲食代金を支払うように言われ、「おまわりは関係ねえ。マスターを呼べ」と大声で叫び、警察官の左あごを右のこぶしで殴った。
罪状認否で被告は「(酔っていたため)はっきりと覚えていない」。裁判官から意見を求められた弁護人は「被告はやったことは覚えていないが、争う趣旨ではない」と釈明した。
検察側の冒頭陳述によると、被告は事件当日、仕事が休みで競馬場へ。その帰りに居酒屋を数軒はしごし、さらにカラオケスナックに入った。店内で女性客に「ババア、いやらしい歌、歌うな」などと繰り返しあくたいを吐いたため、店長が「金を払って帰ってくれ」と退店を促した。だが、被告が拒否したため、店長が110番した。現場に来た警察官と店外で口論となり、手を出した。
被告は調理師だが、飲食代の支払いを拒んだ。その点を弁護人が指摘した。
弁護人「あなたは調理師ですが、自分が作った料理にお金が支払われなかったらどう思いますか?」
被告「怒り心頭に発すると思います」
弁護人「支払わなかった理由は何ですか?」
被告「1度ぼったくりバーで高額料金を請求されたことがあったので、そのことが少し頭をよぎりました」
被告は深酒が事件の原因だと主張し、「しらふの時はしないと確信している」と述べた。「なぜ深酒をしたのか」と弁護人に問われると、家庭の不幸が重なったことを理由に挙げた。「事件当日の午後、実家に電話すると、母の言動がおかしかった。年も年だし、そろそろ危ないかとショックだった。その少し前にも弟のがんが再発し、ダブルでショックだった。心が弱くなっていたので、深酒をした」
検察側は論告で「被告には監督する者がおらず、再犯のおそれがある」と指弾し、懲役1年を求めた。
これに対して、弁護人は最終弁論で「被告には監督者がいないかもしれないが、被告自身が母親と弟の面倒を見る立場なので、再犯のおそれはない」と主張した。
この裁判は即日結審し、裁判官は懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
家族の面倒をみるのは大変なことだが、酒に逃げず、しっかり母親と弟の世話をしてほしい。(末崎光喜)