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【正論】裁判員制度の実施を許すな 東京大学名誉教授・小堀桂一郎 (1/3ページ)

2007.11.13 03:52
このニュースのトピックス正論

「他人を審くなかれ」が普遍の経験則

 ≪専門家からも適切な警告≫

 さる7月27日付の本欄に於いて筆者は、光華寮事件に関する最高裁の判決は司法権独立の尊厳を自ら放棄して対中迎合の俗論に媚(こ)びたものだ、との厳しい批判を加へ、その際筆のついでに、裁判員制度の導入といふ司法界の知的退廃症状に対し最高裁が意識的不作為、むしろ実施推進の姿勢を取つてゐる倒錯の状に深い不信の念を述べた。ただ裁判員法の性格については〈司法権の独立を脅かす危機とまでは読まないでもよい〉であらうとの感想を付しておいた。

 筆者の感想に対して元東京高裁部統括判事大久保太郎氏が書を寄せられ、これは実は司法権の尊厳の放棄といふべき大不祥事なのだと指摘された。大久保氏は『文芸春秋』11月号掲載の論策「裁判員制度のウソ、ムリ、拙速」の中で、憲法違反の性格が顕著なこの様な悪法は決して施行されてはならない、との正論を強く説いてをられる方である。また氏の学統に列なる西野喜一氏の近著『裁判員制度の正体』は、特定の主張を一巻の書に纏(まと)めた著作としてその精密周到の論述は実に感嘆に値する水準のものである。両氏の論旨にふれての筆者の感慨は、「やはりさうであつたか」の一句に尽きる。筆者は平成18年7月に最高検察庁と法務省刑事局の当路者のお二人に直接面談の形でこの制度についての説明を受け、かなり厳しい批判と疑問を呈しはしたのだが、それでも結果としてこの制度についてのやや甘い見方を持たされてしまつたらしいことを後悔してゐる。

 この悪法を事前に廃棄してしまはなければ国民は悔を千載に遺(のこ)すことになる。その理由について、上に名を挙げたお二人を始めとして複数の法学者や法曹界の実務者から、その法制度的・技術的側面の欠陥を衝(つ)いた適切な警告が発せられてゐる。故にその方面からの批判は専門家にお任せし、ここでは法制的知識については全くの素人が、一般的道徳論の立場から、この悪法を廃止すべき所以(ゆえん)を述べることとする。

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