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「平然とうそ」 光市検察側弁論要旨(8) (2/2ページ)

2007.10.18 20:07
このニュースのトピックス脅迫

 被告人は犯行状況について詳細に供述し、殺意や強姦の目的についてもその場の状況も合わせて具体的に述べている一方で、捜査官から追及を受けた事柄でも被告人の意に沿わない点は明確に否定しているのである。

 まず、本件犯行に当たり、被害者の顔面や両手首を緊縛するのに用いたガムテープは被告人が自宅から持ち出したものであるが、当日、被告人は仕事に行くつもりもなく、また通常、仕事で使用するガムテープを自宅から持ち出す必要もなかったのであって、ガムテープ持ち出しの時点で強姦を計画していた可能性について追及するのは捜査官として当然であり、実際にも捜査官から追及を受けているが、被告人は一貫して、本件犯行との関係を否定している。

 また、被告人が被害児の首に巻き付けて絞殺した籠手のひもを所持していた理由についても、下げ振りという工具を作るつもりだったと供述しているが、下げ振りとは重りを細い糸でつり下げて垂直面を確認するものであり、籠手のひものように太いひもを使用するものではない。そして、この点についても、検察官から追及されながらも弁解を押し通している。

 以上の通り、被告人は捜査官の言いなりになっていたわけではなく、否定するところは否定しているのであって、このことからすれば、被告人が認めていた犯行状況に関する供述が捜査官の押し付けによるものでないことは明らかである。

 しかも被告人はF検事から供述調書の取り直しを約束してもらったと言いながら、取り直しを求めた形跡もない。さらに言えば、被告人は捜査段階においても同検事に対し、弁解録取時の検察官、勾留質問時の裁判官の悪口を言うなどしており、その態度は到底、自己の意に沿わない供述を強いられた者の態度とは認められない。

 被告人は平成11年5月2日、光警察署武道場で犯行状況を再現し、供述内容を具体的に動作で示している。この中で、被告人は被害児をカーペット上にたたき付けた態様について「赤ちゃんを…両手で抱え上げ、体の向きを変えるのと同時に、床にたたき付けた」と指示説明しながら、ダミー人形を被告人と対面する格好で支え上げ、回れ右の要領で後ろを振り返り、床に左ひざをつくと同時に、中腰の格好で床に人形を背面からたたき付けている。

 この動作は供述調書には詳しく書かれていなかった態様を具体的に示したものであって、供述調書が捜査官の言いなりになって作成されたものであれば、このような動作は起こり得ないものである。もっとも、被告人はこの動作についても、実況見分に臨場したF検事から指示されたものである旨供述するが、この実況見分より後である平成11年5月5日に同検事が録取した被告人の供述調書には、被告人がひざをついて中腰になった旨の記載はないのであって、同検事が意図的に被告人に動作を再現させたとの被告人の弁解が虚偽であることは明らかである。

 被告人は当公判廷では、1審での検察官の求刑が死刑であったことについて裏切られた感が否めずショックを受けた旨供述しているが、1審で死刑の求刑を聞いた後になされた最終陳述でも被告人は事実を認めていたものであって、検察官に裏切られたという感情を抱いていたことは認められない。また友人にあてた手紙では「死をかけたぼくは何でもできる。だって死刑って言われた者は強いぜ」と記載しており、その一方で検事が取り調べの過程で「虫のように殺した」という表現を使ったことに対して「これは一生忘れてやるか」と記述しているが、死刑を求刑されたことで裏切られたという記述はどこにもないのである。

 被告人は当公判廷では、捜査段階の供述調書について、読み聞かせの際に読み替えられたため、実際の記載と異なっていることに気付かなかった旨供述する。

 ところが2審では、捜査に対する不満を述べる中で、供述調書の作成経過について「読んで聞かせてというところもなかったですね」「ぼくのほうに渡して、読んでくれという形です」と当公判廷とは正反対の供述をしているのである。このことからも、被告人がその場その場で適当に言いつくろった供述を行っていることが歴然としている。

 被告人は捜査段階の当初、当番弁護士の助言を受けることができず、当番弁護士の接見は逮捕後10日くらいたってからの1回だけであった旨供述していたが、実際には、逮捕の2日後には約30分間にわたり接見しており、さらに勾留満期当日にも約20分間接見している。すなわち被告人は当番弁護士の助言について、明らかに事実に反する供述をしている。

▽(3)家裁の調査および少年鑑別所における鑑別

 被告人は家庭裁判所における調査や少年鑑別所における鑑別の際にも、強姦の犯意の発生時期については捜査段階の供述より後のこととしながら犯行自体は認めていたものであり、調査および鑑別の結果については当公判廷で、職員の方の認識度が違う、あるいは誘導されて抵抗はあったが質問に答えたと述べるのみで、積極的に供述を否定していない。

 被告人は少年鑑別所において本件犯行時、被害者と目が合った際「死んじゃえ」と思ったと述べた点につき、当公判廷において「死んじゃえ」と思ったというのは、被害者に取り付いているものに出て行けという意味で言ったものである旨供述する。

 この供述自体、いわゆる母胎回帰ストーリーに乗じたもので信用性が認められないが、その点を除いても「死んじゃえ」と「出て行け」では意味内容が全く異なるのであって、被告人の当公判廷における供述は単なる言い逃れに過ぎないと断ぜざるを得ない。

▽(4)1審および2審の供述

 被告人は当公判廷において、1審の供述に関し、本心では公訴事実に不満があり、機会があれば争いたいと思っていたが、その機会がなかったため認めた形になっている旨弁解している。しかしながら被告人は1審の公判廷においては、自ら積極的に犯行を認める供述をしているのであって、当公判廷における供述が上告審段階に至って突如供述を変遷させたという事実を否定するための言い逃れに過ぎないことが明白に看取される。

 被告人は当公判廷において、2審では弁護人と十分な打ち合わせができなかったため事実を争うことができなかったとして、2審段階での弁護人との打ち合わせにつき、2カ月ないし3カ月に1回くらいしか接見に来てくれず、それも公判期日直前にやっと来るという状態だったため、言い分を十分に聞いてもらうことができなかった旨供述している。

 しかしながら、実際には弁護人との接見は2審の弁護人選任以後結審までに合計61回、多いときには月13回も行われているのである。弁護人との接見は被告人にとっては重大な関心事であることは容易に推測できるところであり、しかも、上記の通り多数回の接見は被告人の供述と相いれないのみならず、被告人において勘違いするということも考えられないところである。

 被告人は開示された証拠については、それと整合する供述をしているが、先に論じた捜査段階での当番弁護士との接見や2審段階での弁護人との接見日時、回数等、被告人の供述前に開示された証拠に記載のない事柄については、平然とうそをつくことが如実に示されている。

▽(5)最高裁に提出した上申書

 被告人が最高裁へ提出した上申書と当公判廷における供述内容が食い違うことは先に指摘したところであるが、被告人は供述が変遷したのではなく、表現の問題であるとする。被告人の供述によれば、上申書作成時には頭の中で起こっていたことと現実に起こったことの区分けができておらず、頭の中だけで起こっていたことを記載してしまったというのである。

 しかし、事件後8年間も被告人が現実であると認識していたことが、なぜ現実と頭の中だけのことと区分けできるのか、その区分けはどのようにして行うのか、被告人には全く合理的な説明ができない。さらに被告人は、本件犯行時に被害者が大声を上げたのが現実ではなく、被告人の頭の中だけで起こったことであると供述する。しかし、どこの誰とも分からぬ男性にいきなり抱き付かれた女性が終始、声を立てないなどということの方が余程不自然であり、むしろ、大声を上げたという従前の供述の方が経験則にも合致する。

 被害者が大声を上げたのは頭の中だけのこととする被告人の供述は、正に単なる言い逃れのための詭(き)弁(べん)に過ぎない。

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