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【風を読む】論説委員長 千野境子 秋葉原通り魔事件 日本型雇用の確立を
このニュースのトピックス:秋葉原通り魔事件
秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大容疑者への取り調べから、かくも凄惨(せいさん)な凶行へと至る彼の深層心理にリストラへの不満や不安があったことが明らかになりつつある。
もちろん職場でのどんな不遇も失業も犯罪を正当化するものではないし、大半の人は捲土重来(けんどちょうらい)を期し必死に生きている。そしてそれが人を成長させることもまたある。
しかし昨今の破滅型犯罪の急増や自殺者が恒常的に3万人を下らない現状は、派遣社員やフリーターという一時はカッコイイとさえ思われた非正規雇用が、いよいよ抜き差しならぬ局面にさしかかっていることを物語る。「事件は構造を明らかにする」とは仏社会学者の言葉である。
その点で、総合研究開発機構(NIRA)の伊藤元重理事長と獨協大の阿部正浩教授とのNIRA対談シリーズ31回は多くの示唆に富んでいる。主婦のパートが象徴するように日本の社会で基本的に「縁辺労働」だった非正規労働が、主たる生計者にまで及び、しかし扱いは依然縁辺労働のため食うや食わずのリスクを抱えるようになった。
実際、非正規雇用での将来設計は難しく、子供どころか結婚にも二の足を踏む、との話は良く聞く。予想を超える急速な少子高齢化もこの問題と決して無関係ではない。こうなると、もはや日本社会の将来像にも関(かか)わる問題だ。
日本の代名詞だった終身雇用制が崩れたのは時代の必然だったにしても、柔軟で安定的な新しい日本型雇用の確立を、政財界さらには労働界も急がないと社会が危うい。