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行方不明の長男は魚の“あしながお兄さん” イージス艦衝突
このニュースのトピックス:イージス艦衝突事故
髪を短く刈り上げた1人の青年が運んだ魚は、東京・上野公園のホームレスに届いていた。「魚のお兄さん」。そう呼ばれていた青年こそが、イージス艦衝突事故で漁船「清徳丸」の吉清治夫さん(58)とともに行方不明となった長男の哲大さん(23)だった。
「魚でもいいですか」。哲大さんの先輩漁師から、ホームレスに炊き出しなどの支援を行っている団体「赤銀杏会(あかぎんなんかい)」(東京都荒川区)に、突然の電話があったのは4年ほど前。「おかずにするから何でもいいですよ」と代表で板前の石崎克雄さん(61)。「団体の活動を取り上げた新聞で知ったみたいだ」と石崎さんは話す。
哲大さんは以来、地元の千葉県勝浦市から団体事務所まで年に数回、トラックで魚を差し入れた。最初は発泡スチロール約30箱分もあり、石崎さんらを驚かせた。サバはみそ煮や塩漬け。イワシは素揚げ。それが冷めると南蛮漬けに。いつの間にかホームレスの楽しみになった。
哲大さんが最後に魚を持ってきたのは昨年5月。「ここに置いておくよ」。いつものように威勢のいい声だったが、「最近あんまり魚が取れなくて」と、差し入れが少しずつ減っていくのを気にしている様子だったという。
「『将来でっかい船を買うんだ』とにこにこ顔で話していたのを思いだす。棒につかまってでも生きていてほしい。いまどき、あんな若者はいない」。石崎さんは声を詰まらせる。
石崎さんの元には、ホームレスから自立した人たちから「魚のお兄さんは大丈夫か」と電話が入る。多くの関係者が、祈るような気持ちで救助を待っている。