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【産経抄】4月16日
このニュースのトピックス:産経抄
生物学者の本川達雄さんが、琉球大学から東京工業大学に移ったとき、一番面食らったのが満員電車だった。込み具合を数値化してみるところが、さすが科学者である。
▼電車に定員の2倍が乗っていたとすると、1平方メートル当たり約5人、1平方キロメートル当たり500万人の密度になる。動物の正常な生息密度は、体の大きさで決まるそうだ。ヒトサイズの動物なら、1平方キロメートル当たり1・4人。つまり通勤電車には、360万倍もぎゅうぎゅうに詰まっていることになる(『世界平和はナマコとともに』)。
▼痴漢は、そんな異常な空間が生み出した犯罪といえる。一昔前までは、被害に遭った女性が、泣き寝入りするケースも多かった。その反省から近年、警察当局は摘発に力を入れている。一方で被告が無罪となるケースも目立ち、痴漢冤罪(えんざい)は、映画のテーマになるほど社会問題化していた。
▼14日には、強制わいせつ罪に問われていた大学教授に、最高裁が、1、2審の実刑判決を破棄して、逆転無罪を言い渡した。無実を訴えてきた大学教授は、「有頂天になる気もない」と語る。冤罪に苦しむ人が、まだいるはずだというのだ。
▼今回の判決は、捜査当局にも大きな衝撃を与えた。今後捜査に消極的になるようなら、卑劣な犯罪者たちを喜ばすことになる。2年前、西武鉄道を経営する西武ホールディングスの株主が、痴漢を防ぐために、防犯カメラの車両への設置を提案したが、実現に至らなかった。もちろん、究極の対策は混雑の解消だ。
▼それまでは、痴漢の被害と冤罪におびえながら乗るしかない。本川さんも、痴漢に間違えられないように、じーっと体を硬くしていたら、肩が凝って、磁気ネックレスを手放せなくなったそうだ。
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