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【産経抄】11月21日
このニュースのトピックス:元厚生次官宅連続襲撃
昭和46(1971)年は、警視庁にとって悪夢のような年だった。内では警察官の不祥事が相次ぎ、外では過激派による爆弾闘争がエスカレートしていた。12月18日には、警視庁立て直しに奔走していた土田国保警務部長の自宅で、妻の民子さんが開けた小包が爆発する。
▼民子さんは即死、四男が重傷を負った。事件の翌日、記者会見を開いた土田さんは、事件をものともせずに、首都の治安につくす決意を淡々と述べた。ただ一度だけ、声のトーンを上げて、犯人に言い放った。「君らは卑怯(ひきょう)だ」。記者席からすすり泣く声が漏れた。
▼元厚生事務次官宅を次々に襲うという、前代未聞の犯行の残虐さが次第に明らかになってきた。土田邸爆破事件では、逮捕された人たちが1審、2審とも無罪となり、検察は上告を断念する結果となった。警察には、同じ轍(てつ)を踏まないように奮起を促したい。
▼その一方で、今こそ、土田さんのような、リーダーが現れてほしいと、願ってやまない。テロや凶悪犯罪を恐れるな、いっしょに戦おうと、社会に呼びかけてほしいからだ。麻生太郎首相はじめ、政治家の口から次々と憤りの声が上がってはいるものの、心に響くものがない。
▼それどころか、厚労省の仕事を評価しないマスコミに、責任の一端があるかのような、筋違いの発言まで飛び出した。土田さんが警視総監になって3カ月後の50年5月、警視庁は連続企業爆破事件で一斉検挙に踏み切り、小紙がそれをスクープした。
▼前日土田さん宅を訪ねた記者に、うそをついてでも、記事を差し止めるべきだったと、後日警察幹部から批判が出たという。しかし、権力の都合で報道が左右されるべきではない。土田さんのそんな信念は揺るがなかった。
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