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【主張】元厚生次官宅襲撃 許されない行政へのテロ
年金のエキスパートで、旧厚生省の事務次官経験者夫妻らが相次いで殺傷された事件は極めて衝撃的である。
犯行の動機、事件の背景などは不明だが、警察当局には一刻も早い犯人逮捕を望みたい。
さいたま市の事件は18日午前、旧厚生省の事務次官だった山口剛彦さん夫妻が自宅玄関で、何者かに刃物で刺されて死んでいるのが発見された。
また、この事件の約8時間後に、東京都中野区の自宅に1人でいたやはり次官経験者の吉原健二さんの妻、靖子さんが宅配便業者を装った男に刃物で刺され重傷を負った。
両事件には犯行の手口など共通点がいくつかある。いずれも凶器が刃物で、自宅を訪ねていきなり凶行に及んでいることや、犯行の時間が、夕方から朝にかけて行われている点だ。
なかでも注目されるのが、事件の動機に直結すると思われる2人の官僚時代の経歴である。
吉原氏と山口氏はともに東大法学部卒業後、厚生省(現厚生労働省)に入省、吉原氏は山口氏の10年先輩に当たる。
両氏は基礎年金制度の導入を柱とする年金大改革(昭和60年)では、吉原氏が年金局長、山口氏が年金課長で法案の策定や成立などに共に携わった。
吉原氏はその後、社会保険庁長官を経て事務次官に、山口氏も年金局長、保険局長など厚生省の中枢を歩んで次官になった。
このようなことから、警察当局が、個人的怨恨(えんこん)よりも年金に絡み官僚機構への強い恨みから、そのトップを標的にした「連続テロ」の可能性が高いとしているのもうなずける。
年金については、“宙に浮いた年金”問題に代表されるように、度重なる社保庁の不祥事が国民の怒りを買っている。年金行政への恨みを当時の行政責任者に向けたのだろうか。迅速な捜査による徹底解明が必要だ。
政治家や首長へのテロは、過去にも起きているが、官僚やその家族が連続して凶行の標的になった例はない。もし、テロだとすれば行政官が萎縮(いしゅく)して職務などを執行できなくなる恐れもあり、行政機能の崩壊につながりかねない。
警察当局は第3の犯行阻止に万全を尽くすとともに、捜査情報を共有して事件解決に結びつけなければならない。