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【断 佐々木譲】リゾート地の悲劇
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オーストラリア人景気に沸く北海道・倶知安町で、痛ましい事件が起こった。地元の日本人女性と結婚したネパール人男性が、妻の殺害を認めたというのだ。いまの時点では、子供は行方不明。
夫婦は妻の父親の経営する貸しコテージ敷地内で、ネパール・カレーと銀細工、アジア雑貨を売る店を開いていたらしい。その店の経営不振が一因で、離婚が話題になっていたとか。詳細はまだわからないけれども、事件にまつわるキーワードの組み合わせには、なんとも哀(かな)しい物語を感じてしまう。
リゾート地。外国人との結婚。素人同士の商売。貸しコテージ経営の父親の援助。エスニック料理と雑貨のお店。手作り銀細工。
そもそもあのエリアは、バブルの前にペンション建設の大ブームがあった。わたしは当時の様子を知っているが、多くは素人の参入だった。接客業でのアルバイト経験さえもない、というひとが、借金や退職金でペンションやレストラン経営を始めたのだ。
しかし、バブル崩壊のあとには、自殺したペンション・オーナーも出たし、妻子に去られた後、孤独死しているところを発見された経営者もいる。オージーたちの投資ブームがくるまで、耳にするのはリゾート地でのペンションやレストラン経営の、過酷な現実の話ばかりだった。景気がよく見えるニセコはまた同時に、ついえた夢が積み重なる土地でもあるのだ。
殺された女性は、地元でずっとこうした実情を見てきたはずだ。そう想像できるだけに、やりきれない。(作家)