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【産経抄】5月6日
このニュースのトピックス:子供の安全
小さな女の子がしゃがんでじっと、アリの行列の行方を見つめている。今年の産経児童出版文化賞の翻訳作品賞を受賞した『よじはん よじはん』のページをめくっていると、思わずほおがゆるんでしまう。
▼原詩は、韓国の童話詩人のユン・ソクチュンが1940年に書いたものだ。解説によれば、若手画家による絵は、60年代の農村風景をイメージしているという。そういえば、同じ時代の日本の里山を舞台にしたアニメ映画『となりのトトロ』に重なるところがある。
▼『トトロ』に出てくるメイは、女の子にそっくりだ。隣の店で今何時なのか聞いてくるようにお母さんから頼まれた女の子は、ニワトリやアリに気を取られて道草ばかり。やはり好奇心の強いメイは、庭で不思議な生き物を追いかけて、トトロのすみかにたどり着く。
▼映画の後半、入院中のお母さんにトウモロコシを届けようと1人で向かったメイは、迷子になってしまう。村人が総出で捜すが、見つからない。トトロが差し向けたネコバスに乗って姉のサツキが助けにいかなかったら、メイはどうなっていたことか。
▼日本の田舎で、トトロの姿を見かけなくなって久しい。代わりに跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するのは、女子供を狙う悪魔たちだ。身を隠すのに都合がいい暗がりが残っているし、何より都会で普及する防犯カメラがないのが好都合だ。なぜか一部の文化人も、管理社会がいやだとカメラを嫌う。
▼学校の人気者だった愛知県豊田市の15歳の女子高生を襲った犯人も、そんな悪魔の一人に違いない。ただ防ぐ手だてはあったはずだ。現場付近では、女子高生がバイクに乗った男に押し倒されるなど、不審者による事件が頻発していた。地域社会はなぜ、彼女を救えなかったのか。