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【Re:社会部】角の丸い名刺
このニュースのトピックス:知能犯
ある事件の取材で都内の男性の自宅を訪ねました。70代半ばの男性は、現役時代は大手総合商社に勤務。あまり表に出せないような“汚れ仕事”も引き受けて、取締役まで上り詰めた人物です。
「はじめまして。角の丸い名刺ですいません」。角の丸い? 何のことかピンとこず、スナックのママたちがよく使う「角の丸い名刺」を想像しました。
「ずっと財布に入れっぱなしだからね。よれよれになって」。名刺は確かにくたびれ、直角だったはずの角は丸くなり、やや変色していました。男性はリタイヤして10年以上。何カ月も、あるいは1年以上も財布の中で眠っていた名刺のようです。
男性は現役時代の人脈や権勢を熱く語りました。その熱心さが逆に名刺とのギャップを引き立て、痛々しさを感じさせました。
詐欺や横領、贈収賄など経済事件の容疑者は立派な肩書きを持つ人も多い。先週は文科省の前部長が逮捕されました。この種の犯罪では、犯行時こそが容疑者の人生のピークかもしれません。しかし盛者必衰、そんなことがいつまで続くのでしょうか。
「記者さんの名刺は角がピンと立って手が切れそうだね。私も現役のころは…。うらやましいよ」。嫉妬(しっと)されるには及びません。こんな名刺、いずれはなくなるのです。名刺で仕事をするな。自戒だけが残る取材でした。(坂)