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シーシェパード立件に協力の壁 証拠収集、照会進まず
米環境保護団体「シー・シェパード(SS)」による日本の調査捕鯨船への妨害問題で、警視庁公安部などが海外で活動するSSを立件するうえで、関係国の協力が壁になっている。公安部はSSの船籍国などに捜査共助を要請。実行メンバーの特定などに必要な証拠の収集に着手したが、照会作業がスムーズに進まないためだ。身柄引き渡しも不透明で、代理処罰のように事件処理を外国の司法当局に委ねることも検討課題に浮上しそうだ。(宝田将志)
■日本船舶への犯罪
捜査対象となっているのは昨年2月と今年3月の妨害行為。SSは日本の調査捕鯨船「日新丸」や「海幸丸」に対し、酪酸とみられる薬品が入った瓶を投げ込み乗組員に軽傷を負わせたり、スクリューにロープを絡ませるなどして航行不能にした。
いずれも公海上での妨害だが、刑法は「国外にある日本船舶内において罪を犯した者」にも適用できると規定。これを根拠に、公安部と海上保安庁は威力業務妨害や傷害容疑での立件を視野に捜査。国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、当時の船籍国・英国やメンバーの国籍国などに捜査共助を要請した。
■実行者の特定
公安部などは乗組員が撮影したビデオ映像を分析しているが、これだけで妨害の実行メンバーを特定するのは不可能。3月3日の妨害は「同時に何人もが酪酸瓶を投げ込み、だれの瓶でけがをしたか見極めるのは難しい」(海保幹部)。
昨年2月の妨害も、ロープを投下した活動家は目出し帽をかぶっており、SSの抗議船が活動拠点にする豪州などの情報に頼らざるを得ない。だが、「照会しても回答は来たり、来なかったりで、こちらのペースで捜査が進まない」(警視庁幹部)のが実情だ。
■身柄引き渡し
実行メンバーを特定し、犯行の立証を終えても、身柄引き渡しがハードルとして残る。SSのメンバーが日本に入国する可能性は低く、日本が身柄引き渡し条約を結んでいるのは米国と韓国だけだからだ。
ただ、日本は豪州、SSの現在の船籍国・オランダなどとともに、海洋航行不法行為防止(SUA)条約を締結。この条約は船舶の安全な航行を故意に阻害する不法行為を「犯罪」とし、(1)条約を犯罪人引き渡しの法的根拠にできる(2)領域内で犯人を発見し引き渡さない締約国は、自国の当局に事件を付託する義務を負う−と定めている。
SSが寄港した豪州の警察当局は3月15日、SSメンバーに事情聴取を行い、マーティン・ファーガソン資源・エネルギー・観光相は「豪政府として起訴も辞さない」と述べた。事件処理を引き受けることを念頭に置いた発言ともとれるが、海事専門家は「豪州は国民の反捕鯨意識が強く、立件に舵を切れるかどうか疑問」と指摘している。