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【産経抄】12月27日
このニュースのトピックス:産経抄
米国の人気テレビドラマで、ハリソン・フォード主演で映画にもなった『逃亡者』には、モデルがいる。オハイオ州の医師、サム・シェパードさんだ。1954年に妻を殺した容疑で逮捕され、10年間服役した。
▼釈放後、無実を訴えながら、46歳で病死した。それから28年後の98年、息子が父親の名誉回復を求めて提訴に踏み切る。原告側が遺体を掘り出し、DNA鑑定を行ったことも話題を呼んだ。
▼この技術が、日本でも数々の成果を挙げている。拉致被害者の横田めぐみさんの遺骨として送られてきた骨が、複数の別人のものだと日本政府が確認して、北朝鮮のでたらめぶりを暴いたのもそのひとつ。食品偽装を見抜く上でも大きな武器となっている。
▼大阪府茨木市の住民を悩ませてきた、女性下着の投げ込み男と14年前の殺人事件を結びつけたのも、DNA鑑定だった。26歳の女性の殺害現場に残された体液と男のそれが、一致したという。今や犯罪捜査に欠かせない存在だが、データベースの情報蓄積が、多ければ多いほど威力を発揮することは言うまでもない。
▼警察庁によれば現在、登録されているのは逮捕した容疑者約1万5000人分。これに比べて、米国では数百万人分に達している。「監視社会」への嫌悪感より、犯罪の押さえ込みを優先する国柄の英国では、さらに国民全員に広げるべきだ、との主張も出てきた。
▼もっとも、DNAは究極の個人情報といわれるだけに、取り扱いは悩ましい。最新の科学捜査も万能というわけではない。シェパードさんの裁判は、結局資料の古さも災いして、無実を勝ち取ることはかなわず、真相はいまだ謎のままだ。ドラマと違い、現実の事件は、ハッピーエンドにはならなかった。