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連載【漂揺の30年(1)】横田めぐみさん拉致 「人ひとりの命は…」 (2/3ページ)
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晩秋の新潟は、厚い雲に覆われる日が多い。
「レインコートはいらない?」
「どうしようかなあ…。今日はやめる」
玄関で白いレインコートを持ったまま、当時41歳だった横田早紀江さん(71)は、中1だった長女、めぐみさん=当時(13)=を送り出した。それっきり、娘の肉声を聞いていない。
夕方、バドミントン部の練習を終えて帰宅する途中、めぐみさんは友人と別れた直後に北朝鮮工作員に拉致された。連れ去られたのは、自宅からわずか50メートルの地点。
「あの日の5日以上前、北朝鮮工作船から発信される電波が把握されていた」。ある捜査幹部はこう明かし、「あの電波がめぐみさん拉致に関係していたはずだ」と確信を深めている。ただ、当初は電波把握と拉致実行の日にちにずれがあり、北が日本の主権を侵害する事件が起きていたことは見逃されてしまった。
なぜ、めぐみさんが失跡したのか、分からなかった早紀江さんら家族は悲しみのどん底に追いやられた。時間だけが流れ、焦燥感を通り越し、ただ打ちひしがれた日々。早紀江さんの頭には「死」がよぎったこともあった。
「私がいなくなったら、めぐみちゃんが帰ってきたときにどうするの」。早紀江さんはその度に自分にそう言い聞かせ、思いとどまった。
どれだけの年月が経過しただろう。朝鮮労働党の現職幹部が第三国で韓国情報機関と接触した際の情報、脱北工作員証言、電波、捜査状況を総合的に判断した結果、「北」の影がようやく見えてくるまでに、失跡から20年を要した。

