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「船場吉兆に一度も『地鶏』と言っていない」 鶏肉店主証言
高級料亭吉兆グループの船場吉兆(大阪市)が産地や原材料を偽装していた問題で、同社に鶏肉を出荷していた京都市の老舗鶏肉専門店「とり安」の男性店主(63)が10日、産経新聞の取材に対し、「(同社との)取引は約15年間に及び、書類にも『地鶏』と書いたことは一度もない」と証言した。偽装が発覚した際、同社は「裏切られた」として店主側に非があるとの立場を強調していた。
店主によると、船場吉兆と取引を始めたのは約15年前。夕方、店じまいをするために掃除をしていたところ、1人の男性が突然、「鶏は残っていますか」と姿をみせ、店内に残っていた鶏肉を買って帰った。翌日、男性から電話で「父親も『これはおいしい』と喜んでいる」と謝意を伝えられ、付き合いが始まったという。
半年後、発送先となっていた店に電話したことがきっかけで、この男性が船場吉兆の湯木正徳社長で、鶏肉をほめてくれたのが国内の料理界で初めて文化功労者に選ばれた料理人、湯木貞一さん(故人)だと知った。
「腰を抜かした。父親といったら、先代の社長さんでしょう。料理の神様みたいな人ですから」
それ以来、店主は同社に卸す肉は家族のだれにも触らせず、1人でさばき続けた。ただ、取引の際に渡す請求書や領収書に『地鶏』と記したことは一度もなかったという。
しかし、同社が商品の「地鶏こがねみそ漬け」「地鶏すき焼き」にブロイラーを使用していた偽装が発覚した9日、同社側から「だましたのか」「地鶏と思っていたのに」などと責められた。湯木社長らが会見で「業者には地鶏と注文し、1キロ5500円の高値で購入していた。裏切られた」などと話したことに衝撃を受けた。
「うちは一言も地鶏と言っていないし、店にも若鶏専門店と書いている。若鶏といえばブロイラーだし、15年にわたって誠心誠意、最高級のブロイラーを卸してきたのに…。一体これまでの信頼関係は何だったのか」
店主は今、怒りよりもむなしさの方が強いという。