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【山口県光市母子殺害事件 遺族の思い】(3) 犯罪被害を乗り越えて…

2007.10.26 09:37
このニュースのトピックス刑事訴訟

 事件後の平成12年1月、私は弁護士であり犯罪被害者でもある岡村勲さんの呼び掛けで、「全国犯罪被害者の会〜あすの会〜」の設立に参画させていただきました。

 あすの会の活動を通じ、たくさんの被害者の方々と知り合うことができました。そして、多くの方が、犯罪だけでなく司法制度そのものにより犯罪の傷口を広げられるような思いをされていることが分かりました。犯罪被害者の抱える問題は、多くの犯罪被害者に共通する問題であり、全ての人が犯罪被害者になる可能性があることに鑑みれば、これは大きな社会問題であることを確信しました。

 例えば、

 ・加害者が逮捕されない場合、事件の真相が分からないだけでなく、その犯罪による医療費などの経済的な損害すらも自力救済を余儀なくされる被害者。

 ・刑事裁判の記録を懸命に集め弁護士を雇い民事裁判を提訴し損害賠償支払い命令が下されても、ほとんど支払いをせずに消えてしまう加害者と、弁護士費用を支払い裁判に費やした膨大な日々を無意味にされる被害者

 ・被害相談やカウンセリング、法律相談に行き、さらに傷を深くする被害者

 ・誤報や興味本位の報道により名誉を傷つけられ、プライバシーを侵害され、日常生活すらできない事態へ追い込まれる被害者

 ・性被害に遇い警察へ訴えることすら出来ない被害者

など、例を挙げればきりがないのですが、とにかく現行法には、犯罪被害者を支援する法律がないどころか、犯罪被害者そのものが法の前提に存在しませんでした。忘れられた存在でした。ですので犯罪被害者に関わる法律が何一つ存在しないのは、当然なのかもしれません。

 私は、微力ではありますが仕事と裁判の傍らで、あすの会の活動を通じ全国の講演会やシンポジウム、署名活動などに参加させていただき、犯罪被害者支援の必要性や刑事裁判や民事裁判の問題点を訴えてきました。

 そして、平成16年12月に「犯罪被害者等基本法」が制定されました。犯罪被害者基本法は、今後の日本の犯罪被害者施策の分水嶺に当たる画期的な法律だと思います。今後、犯罪被害者等基本法の理念に基づき様々な被害者施策が司法や国レベル、地方公共団体レベルで実施されていくことと思います。現に平成19年6月には、刑事裁判への被害者訴訟参加の法案が国会で可決されました。重大犯罪に限られるなどの制約はありますが、被害者が訴訟参加人として法廷に入り、検察官と協議しながら被告人に質問することができるようになります。また、刑事裁判の中で損害賠償請求も提訴することもできます。私の裁判には間に合いませんでしたが、今後多くの被害者が、この法律により被告人に質問したり、意見を表明したりすることで、被害感情が慰撫されたり、民事裁判を提訴する負担を大幅に軽減させることになると思います。被害者にとって、実に有益な法律です。このような刑事訴訟の枠組みを大きく変化させるこの法律制定も犯罪被害者等基本法の理念がなければ、まず実現は不可能だったでしょう。犯罪被害者等基本法が制定された意味が極めて大きいと思います。

 犯罪被害者等基本法には、長年苦しんできた犯罪被害者の積年の思いが込められています。今後も、この思いを無駄にしないように適切な施策が速やかに実行され、不幸にして犯罪被害に遇われた方々が一日でも早く犯罪被害を乗り越え平穏な生活に近づけるようになればと思います。

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