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【法廷から】刑務所で犯行の手口覚えた詐欺師
「今までの経験から、こんなに早く捕まるはずがないと思っていた」
詐欺罪に問われた男性被告(63)は22日、東京地裁で開かれた初公判で、8月に逮捕されたときの心境を供述した。
検察側の冒頭陳述によると、犯行の手口はこうだ。
まず、あらかじめ用意した偽の1万円札80枚が入った封筒を、“見せ金”として電車の荷物棚に置く。標的にする人物に狙いを定め、封筒を拾ったように演技しながら、これ見よがしに開封。「現金だ。山分けしよう」と持ちかけ、半分の40枚を無理やりカバンにねじ込み受け取らせた。
こうして恩を着せておいた上で「自分の息子が入院しているから、ポケットマネーで見舞いをくれ。いいだろう」と謝礼を要求し、被害者の所持金1万円をだまし取ったという。
偽の札束は、1万円札と同じ大きさに切った文庫本の上下面に、白黒でコピーした1万円札を張り付けて作製。封筒は、銀行のATMコーナーで入手したものだった。7月中旬から犯行を重ね、5人以上から約10万円をだまし取った。
妻が経営する居酒屋の経営が不振で、「(滞納していた家賃分の)30万円になるまで続けるつもりだった」と犯行動機を供述した被告。「中高年の恰幅(かっぷく)のよい人に狙いを付けた」というその理由は、「恥ずかしさから届け出ないだろう」と考えたからだ。
検察官から「なぜ白黒のコピーだったのか」を問われると「カラーコピーだと通貨偽造になると思った」。あきれるほど手の込んだやり方だが、この熱心さで仕事も頑張れなかったのか。
実は、被告が同罪で逮捕されたのは、今回で4回目。平成10年、12年、16年にも全く同じ手口で逮捕され、それぞれ有罪判決を受けた。今回は、1年10カ月の懲役を終え、出所してから3カ月足らずでの犯行だった。
この手口は「(以前に別の罪で服役していたとき)刑務所内で見たテレビからヒントを得た」という。罪を償うべき刑務所で、犯罪の手口を考えていたとは、何のための服役だったのか。
犯行後“ノルマ”の30万円を達成しようと、次の標的を求めて犯行現場に戻ってきたところを、警察官と被害者に見つかった。“想定外”の早さでの逮捕だった。
裁判官から「出所後はどうやって生活を立て直すのか」を問われると「仕事がなければ、生活保護など福祉に頼りたい」と、虫のいい答えを返していた。(菊地剛)