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【産経抄】10月18日
このニュースのトピックス:子供の安全
昭和8(1933)年に32歳で来日したとき、まず母国ドイツとの違いに驚いたのが、「大人と子どもの間がら」だった。「西洋の家具はすべて大人の寸法で」こしらえてあるので、大人が仕事や食事をしているところを小さな子供は見られない。
▼日本では畳の上だから、子供は「いたずらもしますが、楽しいことも大人といっしょに楽しめます」。日本人男性と結婚して、戦中、戦後を生き抜き、平成7年に93歳で亡くなった佐野えんねさんの述懐である(『日本に住むと日本のくらし』樹心社)。
▼「子供の楽園」と評した英国の外交官オールコックをはじめ、幕末から明治にかけて、来日した多くの外国人が、社会全体で子供を慈しんでいるようにみえる日本に、感嘆を惜しまなかったことはよく知られている。その気風は、少なくとも昭和の初めごろまでは残っていたらしい。平成の世には、耳をふさぎたくなるような子供の悲劇が、連日のように伝えられているというのに。
▼えんねさんは昭和31年に、お気に入りだった『ノンちゃん雲に乗る』(石井桃子著)のドイツ語訳を出版した。まだ本になる前の原稿を、ドイツの子供たちに読み聞かせたことがある。
▼小学2年生のノンちゃんが泣きながらのぼった木から池に落ちたと思ったら、空に落ちていたところで「続きは晩に」と言って出かけた。すると子供たちは「死んでしまうのか心配で」、勝手に続きを読んでしまったという。
▼ふとんの中でノンちゃんは、手の甲に落ちてきたおかあさんの涙のしたたりで目を覚ます。兵庫県加古川市の自宅前で、何者かに刃物で刺された小学2年生の女児(7)は、雲に乗ったまま帰らなかった。小首をかしげた愛らしい笑顔の写真を残して。