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【産経抄】10月17日
このニュースのトピックス:少年犯罪
戦闘そのものの将棋と違い、囲碁は最終的に、陣地を広くかこった方が勝つゲームだ。したがって自分も満足、相手も刺激しない手を打っていると、戦闘らしきものがないまま終局を迎えることもある。
▼もっとも、ヘボは強引な手を打ちがち。相手を怒らせると乱戦になる。フリージャーナリストの草薙厚子さんが書いた『僕はパパを殺すことに決めた』(講談社)をめぐる騒動に似ているところがある。奈良県の医師(48)宅で、母子3人がなぜ焼死しなければならなかったのか。
▼少年院送致となった長男(17)の動機を探ろうにも、事件の情報は少年法の壁に阻まれて漏れてこない。そんな状況のなかで、長男と、父親の供述調書を入手したのは、草薙さんのお手柄としよう。問題はそれから。供述調書はあくまで、捜査側の観点で作られている。関係者への取材によって、検証する作業が欠かせない。
▼草薙さんはそれをおこたり、著書のほとんどは、供述調書の引用が占めた。調書を所持する人は限られているから、入手先を突き止めるのも難しくない。逮捕された鑑定医とどんなやりとりがあったのか不明だが、情報源を守れないのなら、ジャーナリスト失格といわれても仕方がない。
▼要するに、表現の自由か人権か、そんな大層な話ではない。もうすこしうまくことが運べなかったのか、につきる。表紙のデザインに、長男のメモを使ったことも、当局を刺激しないはずがない。鑑定医の逮捕はやりすぎだとしても。
▼碁に話を戻せば、実力者同士でも、双方が勝算ありとみれば乱戦になる。草薙さんも、当局の反発は織り込み済み、自らの仕事の公益性を盾に戦い続けるつもりなら、話は別だ。果たしてその覚悟ありやなしや。